脳卒中リハビリで注目!長下肢装具(KAFO)の早期作製が歩行自立と在院日数に与える影響

脳卒中関連

☑️【2分で読める要約版】

デジタル技術で変わる脳卒中リハビリ〜長下肢装具早期作製の効果とは?

脳卒中で片麻痺となった患者の歩行訓練には「長下肢装具(KAFO)」が欠かせません。特に重度の片麻痺患者にとっては、膝関節の安定を助け、安全に立位・歩行練習を進める上で重要な役割を果たします。

これまでKAFOは石膏採型による作製が主流で、納品まで4〜5週間を要していました。その間は汎用品の装具を使用するしかなく、練習量や安全性に課題が残っていました。

そこで登場したのが、デジタル画像技術を活用した新たな採型法(Central KAFOシステム)。患者の下肢を3Dスキャンし、精密なデータをもとに1週間ほどで専用の装具が完成します。

実際の研究では、この新技術により次のような効果が確認されました。

  • KAFO作製期間24日短縮
  • 歩行自立(軽介助歩行)獲得までの期間49日短縮
  • 病棟での歩行練習開始までの期間35日短縮
  • 在院期間22日短縮

早期に専用装具を使うことで、歩行練習量が増加し、患者の自信や家族の安心感も高まります。さらに、看護師・介護士による介助歩行も早く始められるため、リハビリ全体の質が向上します。

まとめ

デジタル技術によるKAFO早期作製は、患者の早期回復、在宅復帰、医療資源の効率化と多くの面で大きなメリットをもたらします。今後のリハビリ現場における標準となる可能性を秘めています。

KAFOの作製期間を短縮することで、歩行自立と在院期間に好影響

長下肢装具(KAFO)の作製期間を短縮することで、脳卒中片麻痺患者の歩行自立が早まり、在院期間も短縮される——。最新の研究は、デジタル画像技術を活用した新たな装具作製法が、回復期リハビリテーションにおける大きな突破口になることを示しています。

従来の装具作製には時間と適合性の課題があった

脳卒中によって重度の片麻痺を患った患者は、自力で立ったり歩いたりすることが困難になります。特に膝関節の安定が保てず、転倒のリスクが高まります。ここで活躍するのが「長下肢装具(KAFO)」です。KAFOは下肢全体をしっかりと支え、立位・歩行練習を安全に行えるようサポートします。

従来、KAFOの作製には石膏採型を用いるのが一般的でした。しかし、この方法では採型から納品まで4〜5週間も要し、その間は備品の汎用KAFOを代用せざるを得ません。汎用KAFOは患者の体型に完全にはフィットせず、長時間の歩行練習が難しくなるケースもあります。

一方、デジタル画像技術を用いた新たな採型法(Central KAFOシステム)は、患者の下肢を撮影し、精密な3Dデータをもとに装具を設計・製作します。この結果、わずか1週間で患者専用のKAFOが納品されるようになりました。こうして早期に適合の良い装具を使用できる環境が整ったことで、リハビリの質と量が大幅に向上するのです。

デジタル技術導入で何が変わったのか?実データで検証

実際に行われた研究では、2018年から2022年に回復期リハビリ病棟に入院した脳卒中片麻痺患者のうち、KAFOを作製した21名が対象となりました。うち15名は従来の石膏採型による「従来群」、6名はデジタル画像技術を使用した「早期作製群」として比較されました。

その結果は驚くべきものでした。早期作製群では以下のような効果が確認されました。

”KAFO作製期間”:従来群43.9日→早期作製群19.8日(約24日短縮)

”軽介助歩行獲得までの期間”:従来群105.8日→早期作製群57.0日(約49日短縮)

”病棟での歩行練習開始までの期間”:従来群111.8日→早期作製群76.3日(約35日短縮)

”在院期間”:従来群157.8日→早期作製群136日(約22日短縮)

これらのデータは、早期に本人用KAFOを提供することが歩行自立までの道のりを大幅に短縮することを明確に示しています。

さらに、早期にKAFOを使用できれば、病棟スタッフ(看護師・介護士)による日常生活での歩行介助も早く始められます。これにより、リハビリ専門職以外のスタッフも日常的に歩行練習を支援できる環境が整い、歩行機会そのものが大幅に増加します。リハビリにおける「練習量の確保」が運動学習を促進し、歩行機能の改善を早めることは数々の研究でも証明されています。

また、患者自身も早期に歩行介助量が軽減されることで自信を回復し、退院後の生活に対する前向きなイメージを持つことができます。家族にとっても「退院時の歩行状態を具体的にイメージできる」という安心感は大きなメリットです。

早期作製の価値は臨床・患者・家族すべてに恩恵をもたらす

デジタル画像技術を活用した長下肢装具の早期作製は、単なる技術革新にとどまりません。患者のQOL向上、リハビリ効率の向上、医療資源の有効活用、そして在宅復帰支援まで、多方面にわたる好影響をもたらします。今後、この新たなアプローチがさらに普及し、より多くの脳卒中患者の早期回復を後押しすることが期待されます。

現場の療法士・医療スタッフにとっても、技術導入により「今までできなかったことができる」環境が整いつつあります。デジタル技術の活用が、これからのリハビリテーション現場を大きく変えていく——まさに今がその転換期にあるのかもしれません。

まとめ

デジタル画像技術による長下肢装具(KAFO)の早期作製が、脳卒中片麻痺患者の歩行自立と在院期間に与える好影響について解説しました。従来の装具作製に比べて大幅な時間短縮が可能となり、練習量の増加・患者の自信回復・在宅復帰支援といった多くのメリットが明らかになっています。今後のリハビリ現場では、この技術のさらなる普及が期待されます。

参考文献

佐藤勇太ほか(2025).長下肢装具の作製に要する期間の短縮が脳卒中片麻痺患者の歩行自立度の改善に及ぼす影響.Journal of Assistive Technology in Physical Therapy,Vol.4 No.2,59–66.

JSTAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

※詳細な内容に関心のある方は、原著をご参照ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました