脳卒中患者のトイレ動作を自立へ導く!急性期リハに必要な「体幹×認知」の視点とは?

脳卒中関連

※今回は作業療法士の方が執筆しているものになります。

☑️【2分で読める要約版】

急性期脳卒中患者の「トイレ動作の自立」に必要な2つの要因とは?

急性期脳卒中患者の退院時におけるトイレ動作の自立には、体幹機能(TCT)と認知機能(MMSE)の両方が良好であることが重要”と決定木分析による研究で明らかになりました。
TCTが80点以下では約96%が非自立、MMSEが18点以下でも約86%が非自立という結果が示され、両者のバランスと相互作用が自立のカギを握っていることが示唆されました。

作業療法の現場では、TCTとMMSEを入院初期から評価し、介入戦略に組み込むことが有効です。
たとえば、体幹機能が不良な場合には起居動作や移乗訓練、認知機能が低下している場合には環境調整や視覚的サポートが推奨されます。

トイレ動作の自立支援は、ADLだけでなく患者の尊厳を支える重要な介入。明日からの臨床にぜひ活かしてみてください。

TCTとMMSEがカギ!トイレ自立に必要な“2つの視点”

脳卒中急性期における「トイレ動作の自立」には、体幹機能(TCT)と認知機能(MMSE)という2つの要因が密接に関連しており、その相互作用が重要であることが明らかになりました。この知見は、限られた入院期間の中で効率的に自立支援を進める上で、作業療法士にとって極めて実践的な指針となります。

なぜトイレ動作の自立は難しいのか?

トイレ動作は、ADLの中でも患者の尊厳や退院後の生活の質に直結する、きわめて重要な動作です。しかし、単純な動作ではなく「尿便意の認識」「衣服の操作」「トイレ移乗」など、複数の要素が複雑に絡み合う行為です。そのため、自立となるには複数の身体的・認知的機能が適切に連動する必要があると考えられてきました。

そこで本研究では、急性期脳卒中患者246名を対象に「退院時にトイレ動作が自立しているか否か」を分類し、その関連因子を決定木分析で明らかにするというユニークなアプローチが採用されました。

決定木分析が示した「最も影響力のある因子」とは?

本研究の最大の特徴は、退院時の評価として以下2つの指標が抽出された点です。

  • TCT(Trunk Control Test:体幹機能)
  • MMSE(Mini-Mental State Examination:認知機能)

1. TCTは「最初の分岐点」

まず決定木分析において最も重要な初期分類要因として選ばれたのがTCTでした。
TCTが80点以下のグループでは、約96%がトイレ動作非自立という結果となり、体幹機能が不良であることが、他の要因に関係なく自立を妨げる強力な因子であることが分かりました。

2. MMSEが次なる鍵を握る

TCTが81点以上と良好であっても、MMSEが18点以下の場合、約86%が非自立という結果となり、認知機能の低下がトイレ自立を阻害する要因となっていました。
つまり、体幹機能と認知機能の両者が揃って初めて「トイレ自立」が見えてくるということです。

TCT × MMSEの“相互作用”が示す臨床的な意味

この結果から、体幹機能と認知機能のいずれか一方だけを高めても不十分であり、両者の“バランス”がトイレ動作の自立に不可欠であることが示唆されました。

作業療法にどう活かす?評価と介入の実践ヒント

本研究は、急性期脳卒中リハビリテーションに携わる私たち療法士に、明確なメッセージを与えてくれます。

「体幹機能(TCT)と認知機能(MMSE)の両方を重視せよ」

急性期病院の限られた日数の中で、どのように効率よくトイレ動作の自立を支援するか。その答えの一端が、この研究から見えてきました。

今後の作業療法計画では、TCTとMMSEの評価を組み合わせた目標設定や介入戦略が、より効果的な自立支援につながる可能性があります。

明日からできる!現場で使える実践ポイントまとめ

  • 入院初期からTCT・MMSEを評価し、トイレ動作の自立見通しを立てる
  • TCT 80点以下には体幹トレーニングを重点的に実施

MMSE 18点以下の患者には、環境整備や視覚的手がかりを活用して認知面をサポート

最後に

トイレ動作の支援は、単なるADL訓練ではなく、患者の尊厳を守り、退院後の生活の質を左右する大切な介入です。
本研究を通じて得られた知見を、ぜひ明日からの臨床に活かしてみてください。

参考文献

小宮山貴也ほか(2025).急性期脳卒中患者におけるトイレ動作自立に関連する要因の相互作用について.作業療法,44巻2号,160–166頁.

JSTAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

※詳細な内容に関心のある方は、原著をご参照ください。

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