☑️【2分で読める要約版】
理学療法士・作業療法士養成校の1年生58名を対象に行われた調査によって、「学習意欲」と「成績」に密接な関係があることが明らかになりました。
注目すべきは、学びに対する「内的動機づけ」──つまり“勉強が楽しい”“もっと知りたい”という気持ちです。
この内的動機づけが高い学生ほど、成績(GPA)が良い傾向にあり、逆に低い学生は成績も振るわないことが分かりました。
また、成績下位の学生はスマートフォンの使用時間が長い傾向にあり、勉強時間の確保にも影響していた可能性があります。
この結果は、単に「頑張れ」と伝えるだけでは成績向上に結びつかないことを示しています。
授業を“面白い”“役立つ”と感じさせる工夫や、学生の知的好奇心を刺激する関わりが、長期的な成果に直結するのです。
学生指導や教育に関わる方にとって、成績向上のヒントは「やる気の質」にあるかもしれません。
内的動機づけが高い学生ほど、成績が良くなる傾向にある
成績の良し悪しは「努力」だけで決まると思われがちですが、実はその根底には“学びたい”という「内的動機づけ」が強く影響していることが、理学療法士・作業療法士養成校の学生を対象にした最新の調査から明らかになりました。
学生の学習意欲がどのように変化し、成績にどんな影響を及ぼすのか——そのリアルな実態に迫ります。
好奇心から生まれる自発的な学びこそ、継続と成果を生むカギ
本調査では、函館市の養成校1年次生58名を対象に、入学直後から中間試験後まで4か月間にわたり、学習動機づけの変化を追跡。さらに、成績上位25%と下位25%のグループで、動機づけの傾向と学習時間、スマートフォン使用時間の違いを分析しました。
すると、最も自己決定的な動機づけである「内的調整」(=知的好奇心や楽しさから学ぶ姿勢)において、上位グループが下位グループを一貫して上回る結果が得られたのです。
つまり、「勉強が面白い」「知識を得ることが楽しい」と感じられる学生ほど、自然と成績が伸びていく傾向があるということ。
加えて、スマートフォン使用時間が多い学生ほど成績が低い傾向も見られ、時間の使い方とモチベーションの質が、成績に大きく関わっていることも示唆されました。
スマホ時間が多いと、内的動機づけも勉強時間も減る
実際に成績下位グループでは、4つの測定時期すべてで内的調整のスコアが低く、1日のスマートフォン使用時間が長いという傾向が見られました。
対して成績上位グループは、特に6月(中間試験直前)にかけて勉強時間を徐々に伸ばしており、その背景には「学びたい」という内発的な動機があったと考えられます。
つまり、「勉強しなきゃ」ではなく「もっと知りたい」「おもしろい」が学習の原動力になっている学生が、時間の使い方も有効にでき、結果として成績を伸ばしていたのです。
成績向上のカギは、講義内容を“面白くする工夫”にあり
この調査結果から言えるのは、学生の学力向上には、内的動機づけを引き出す教育アプローチが不可欠だということです。
授業内容を単なる知識の伝達にとどめず、「なぜ学ぶのか」「どう役立つのか」「どこがおもしろいのか」といった視点を積極的に盛り込むことで、学生の好奇心を刺激し、自発的な学びを促進できます。
また、スマートフォンなど気を逸らす要因への理解とフォローも必要です。使い方次第では学習ツールにもなるため、目的別の使用法を指導するのも一案です。
おわりに:学生一人ひとりの“心の火”を灯す教育を
「成績が悪いのは努力不足」という一括りでは見えない、学生たちの“内面”に焦点を当てた本研究。
そこから浮かび上がったのは、「好奇心」と「目的意識」が学習を支える最大のエネルギーになるという事実です。
学生のやる気が見えず悩む先生方こそ、ぜひ一度この視点を取り入れてみてください。
学びを“自分ごと”に変えるきっかけは、意外とシンプルな問いかけや、授業の一工夫から生まれるのです。
参考文献
工藤達也・古館裕大・小西宏明(2023)「入学後の学習動機づけの経時的変化と成績との関係-成績上位群と下位群の比較-」『道南医学会ジャーナル』第8号,pp.89–92.
JSTAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
※詳細な内容に関心のある方は、原著をご参照ください。
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