☑️【2分で読める要約版】
介護現場で悩みの多い「トイレ介助」。実は”膝を伸ばす筋力(膝伸展筋力)”が十分あれば、介助量を減らせることが最新研究で分かりました。
介助を減らすカギは「0.16kgf/kg」
介護老人保健施設に入所する117名(平均83歳)を調査した結果、膝伸展筋力が体重比0.16kgf/kg以上あれば、一部介助でトイレ動作が可能になる確率が高いことが判明。
しかもこの関連は、年齢・性別・認知症・脳血管疾患・透析治療などの有無に左右されませんでした。
どんな場面で役立つ?
トイレ動作には立ち上がりや立位保持が必要で、膝の筋力が重要です。筋力がある人は便座の立ち座りやズボンの上げ下げもスムーズ。膝伸展筋力が強いほど家族の介護負担が軽くなり、在宅復帰の可能性も高まります。
実際に一部介助群の在宅復帰率は52.4%、全介助群は20%に留まりました。
今すぐできる対策は?
膝伸展筋力は理学療法士の指導のもと、スクワットやレッグプレスなどで鍛えられます。自宅でもできる簡単な運動を続けることで、要介護度の悪化予防や自立支援に直結します。
まとめ
- 膝伸展筋力0.16kgf/kgが介助軽減の目安
- 年齢や病気に関係なく有効
- 在宅復帰率も向上
- 介護予防・リハビリの新たな目標に最適
「膝を鍛える=自立を広げる」
今後の介護・リハビリにぜひ活用していきましょう!
膝伸展筋力を高めることでトイレ介助の負担は減らせる!
介護老人保健施設において、多くのご家族や介護スタッフが頭を悩ませるのが「トイレ介助」の問題です。最新の研究では、膝伸展筋力(ひざを伸ばす力)が一定以上あれば、トイレ動作の介助量を軽減できることが明らかになりました。具体的には、体重比で0.16kgf/kg以上の膝伸展筋力があれば、一部介助でトイレ動作が可能になる可能性が高いのです。
トイレ動作には膝の力が不可欠!
トイレの動作を思い浮かべてみてください。車いすから立ち上がり、ズボンを下ろし、便座に座り、排泄後はまた立ち上がってズボンを上げる。これらの一連の動作では、実は”膝を伸ばす力(膝伸展筋力)”が大きな役割を果たしています。
特に高齢者の場合、筋力の低下によって「立ち上がり動作」や「立位保持」が難しくなり、トイレ動作全体に介助が必要となるケースが増えます。逆にいえば、膝伸展筋力が一定以上あれば、立ち上がりや姿勢保持が安定し、介助量を減らすことができるのです。
さらに今回の研究では、年齢や性別、既往歴、透析の有無、認知症の有無などに関わらず、膝伸展筋力がトイレ介助の量に強く関連していることが示されました。つまり、他の条件に左右されず、膝伸展筋力を鍛えること自体が介助軽減に役立つというわけです。
117人の入所者データが裏付ける事実
実際に行われた研究では、介護老人保健施設に入所中の117人(平均年齢83歳)を対象に、トイレ動作の介助量と膝伸展筋力の関係を調査しました。
まず、トイレ動作が「一部介助」で可能な人と「全介助」が必要な人に分類。そして、膝伸展筋力を計測したところ、一部介助群の膝伸展筋力の中央値は0.23kgf/kg、一方で全介助群は0.12kgf/kgと大きな差が認められました。統計的にもこの差は有意であり、膝伸展筋力が介助量に深く関わっていることが裏付けられました。
さらに、カットオフ値をロジスティック回帰分析によって算出した結果、0.16kgf/kgという数値が導き出されました。この値を基準に、膝伸展筋力が0.16kgf/kg以上ある人は、そうでない人に比べて約10倍以上も一部介助でトイレ動作が可能になる確率が高いことが分かりました。
注目すべきは、認知症や脳血管疾患、透析治療などの有無を考慮した上でもこの関連性は変わらなかったことです。つまり、幅広い高齢者層に共通する指標となり得るのです。
膝伸展筋力の強化は「在宅復帰」をも後押しする
この研究の意義は単に「介助量の軽減」にとどまりません。トイレ動作の自立度が高まることは、在宅復帰の可能性を高めることにも直結します。実際に今回の研究では、一部介助群の在宅復帰率は52.4%であったのに対し、全介助群はわずか20.0%に留まりました。トイレ動作を自分でできるかどうかが、家族の介護負担や施設入所継続の判断に大きく影響している現実が見えてきます。
膝伸展筋力は理学療法士が中心となって運動療法によって安全に鍛えることが可能です。シンプルなスクワット動作やレッグプレスなど、自宅でもできる運動もあります。高齢者でも無理のない範囲で筋力を維持・向上させていくことが、介護予防やQOL向上につながるのです。
もちろん、今回の研究は単施設・横断研究という限界もあります。しかし、現場で日々悩む介護者やリハビリ職にとって、「まずは膝伸展筋力を0.16kgf/kgを目標に鍛えよう」という具体的な目標設定ができることは大きな成果です。
【まとめ】
- トイレ介助の負担軽減には膝伸展筋力が重要
- カットオフ値は「0.16kgf/kg」
- 筋力強化が在宅復帰率の向上にもつながる
- 理学療法士や介護スタッフがすぐに実践できる具体的指標
介護現場における新たなエビデンスとして、今回の研究は多くのヒントを与えてくれます。「膝を鍛えることが、自立の一歩につながる」——そんな視点で日々の介護・リハビリに取り組んでみませんか?
参考文献
松藤直子ほか(2025)「介護老人保健施設の入所者におけるトイレ動作の介助量と膝伸展筋力の関連」地域理学療法学 4(2), 99-105
JSTAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
※詳細な内容に関心のある方は、原著をご参照ください。
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